「墨付け」とは、木材に骨組みの基準線を引くこと。「手刻み」とは、その線に沿って木材を加工していくことです。現代の多くの現場では、機械による工場加工(プレカット)が主流となっていますが、たまい工務店では今もこの手仕事を続けています。なぜなら、木は一本一本が異なる生き物だからです。機械は均一に刻むことが得意ですが、その木が持つ癖や性質を読み取り、どこでどう活かすかを判断することはできません。木と向き合い、対話しながら刻んでいく——その工程にこそ、長く住み継がれる家をつくるための知恵が宿っています。

木の個性を、家の強さに変える

木には一本一本、曲がりやねじれ、育ち方の違いから生まれる癖があります。大切なのは、その癖を抑え込むのではなく、どこでどう活かすかを見極めること。力を受け止める場所、全体のバランスを支える場所、木同士が組み合わさる場所。それぞれにふさわしい役割を与えることで、木は本来の力を発揮します。

墨付けと手刻みは、そうした木の性質を一本一本読み取り、家の構造へと落とし込んでいくための仕事です。木の向き、癖、力の流れを見極めながら刻むことで、木の持つ強さを無理なく引き出し、長く住み継がれる家の土台をつくっていきます。

法隆寺が1300年以上もの時を超えて立ち続けているのも、決して偶然ではありません。木を生きた素材として扱い、その性質を読み、組み上げてきた職人たちの技が、今も建物を支え続けているのです。

木は、切られてからも生きている

もう一つ、見落とされがちな大切な工程があります。木の乾燥です。

木は伐り出されたあとも、周囲の環境に合わせて変化し続けます。湿気を吸い、湿気を放ち、季節に応じて膨らんだり縮んだりしながら、少しずつその場所になじんでいく。家の襖や建具が夏と冬で動き方を変えるのも、木が呼吸しているからです。木は柔軟で粘り強く、時間をかけて住まいの一部として落ち着いていきます。

木の呼吸を止めずに、生きたまま使う。そのために、自然乾燥に時間をかけ、一本一本の状態を見極めます。効率だけを考えれば遠回りに見える工程かもしれません。それでも、その手間をかけることで、木は本来の粘り強さを保ち、長い年月にわたって家を支え続けてくれます。

数百年先を、今の手で支える

ヒノキは、伐採されたあとも時間をかけて強度を増し、長く建物を支え続ける木だと言われています。私たちが今手がける家も、孫やひ孫の世代まで、その骨格を保ち続けることができる。実際に古民家再生の現場で骨組みを見ると、100年以上前に建てられた家でも、材料として十分に使い続けられる木に出会うことが多くあります。

木の声を聞きながらつくる家は、一代で役目を終えるものではありません。今の手仕事が、未来の暮らしを支えていく。当社の墨付けと手刻みには、そうした長い時間へのまなざしが込められています。